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なぜ、認知症の問題に取り組むのか? [雑記]

初めての方とお会いすると、
「若いのに、なぜ高齢者の問題、特に認知症について取り組んでいるのですか?」
とよく聞かれます。

普通のNPO、例えば、教育や環境問題、貧困支援などに取り組む人は、あまりこうした質問を受けないのではないでしょうか。恐らく、医療や介護の問題は、直面して初めてどのような問題があるのかを感じることが多く、問題についてのイメージがわかないので、すごく特殊な人々の人権を守る活動みたいに思っている方も少なくないのかもしれません。

番組制作をしていた頃に、認知症の方やご家族と出会い、これは「特殊でかわいそうな人の問題」ではなく、医療や介護の業界のみならず、社会全体の設計に関わる問題で、認知症を入り口にその設計に関わりたいと思ったからなんですが、そう言われても分からないと思うので・・・
ちょっと長くなりますが、なぜ私が今この問題に取り組んでいるのか、経緯について書きたいと思います。

認知症の問題との出会い
初めて認知症の問題と出会ったのは、2006年、ドイツの介護施設を取材していた時でした。興奮したり、奇声を上げて、一見何をしようとしているのか理解できないお年寄りたちと、心を通わす技術があることを知りました。バリデーションという方法を通して、お年寄りの気持ちに共感し、同じ場所に立つことで、信頼関係を築き、穏やかな暮らしを送ることが可能になります。 その時思ったのは、認知症そのものは、脳の病気ですが、認知症を問題たらしめているのは、周囲の人々であり、社会のあり方、人々のつながりのあり方ではないか、ということです。

その後、各地で日本で認知症の方たちの取材させていただきましたが、適切な情報を得て、周りの人々が連携しあって支える環境があれば、認知症になった方は、本当にイキイキと暮らすことが可能です。その一方で、適切な情報に出会うまでに何年もかかった方や、行政や医療の狭間で置き去りにされたままの人が少なくないことも感じました。認知症の方が詐欺などの被害にあったり、判断力の低下から家族間で資産トラブルになったり、あるいは家族が介護のために離職したりと、様々な問題が噴出するようになっています。

日本は、歴史上、前例のない認知症社会に突入しているのです。しかし、現在、国は認知症対策の方向性も示せないまま、最低限度の仕組みであるはずの介護保険制度も財政上の理由から修正を余儀なくされいます。このまま、問題が放置されれれば、認知症の方やご家族だけでなく、社会にとっても大きな損失になることが目に見えています。

「対策に予算を」という従来アプローチの限界
とは言え、「これだけの赤字財政で、これ以上の対策予算は無理では」とか「人のつながりが希薄化し、雇用環境が悪化する中で、健常者でも安心して暮らせないのに、ましてや病気の人が安心してくらせるなんて無理」
といった声が聞こえてきそうです。

確かに、10年前に鳴り物入りで登場した介護保険制度も、財政上の理由から、介護給付を抑制する方向に舵を切っており、陳情などを通じて予算を大幅に増やすことは難しいでしょう。しかし、認知症になっても安心して暮らせる社会を目指すことは、同時に自殺に追い込まれる人を減らすことでもあり、地域医療の改革を行うことでもあり、介護職の労働環境を改善することでもあり、非正規雇用やワーキングプアーの問題に取り組むことでもあります。

社会のイノベーションが必要
好む好まないに関わらず、日本は、人類の歴史上経験のない割合の高齢者がいて、その中の相当数の人が認知症であるという、「認知症社会」になっていきます。高度経済成長期のように、パイが成長を続ける社会であれば、陳情と富の再分配により、老いや介護を、厄介ごととして対処するアプローチで大丈夫だったかもしれません。しかし、現在の日本は、パイがほぼ増えない社会であり、別の方法が必要になります。すなわち、例え、人物金が増えなくても、埋もれている資源を見つけ出し、それらをつなぎ合わせることで、<住みやすさ>や<安心>を増やしていくというアプローチ、すなわち社会イノベーションが不可欠なのではないかと思います。

NPOの世界に転じてから1年半。まだまだ、トライアンドエラーの段階ですが、全国に散り散りになっている問題解決のための資源(人やアイデア、お金)を掘り起こし、つないで、解決への道筋をつけていきたいと思っています。

(長文読んでくださった方はありがとうございました。)
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